新たな道を追加して広がる世界
行って帰るだけでは物足りない
変わらない日常のⅠ-Ⅴ-Ⅰ
Iドミソ=主和音(トニック)とVソシレ=ドミナントの2種類の響きは覚えたでしょうか?
特にV→Iの進行は大半の曲のクライマックスに使われていますし
収束感、解決感、着地感がとてもつよく音感としてはとても分かり易いので是非
色んな曲を聞いて感覚を覚えましょう。
コード譜を見ながら答え合わせを忘れないように
トニックとドミナントのコード進行は日常生活に例えると
トニック=自宅
ドミナント=いつもの帰り道
と言えます
トニックからドミナントに進行するとほとんどの場合トニックに解決します
すなわちコード進行は自宅から出発して自宅前の道路に戻ってくると必ず一旦自宅に帰ることがルールとなっているという事です
ただ、音楽の構成はもっと複雑で様々な場面展開がありますよね。
それは、この後に出てくるもう一つのコードが鍵を握っているのです
寄り道をする
コード進行はトニックに解決することで一段落します
そのコード進行パターンでトニックとドミナントのみを使うと
家と家の前の道路を行ったり来たりする
聞いていて安定感のある、平凡な日常のような音楽になってしまいます
ところが、あなたも共感できると思いますが、そのような毎日は飽きてきます。
だから、トニックの代理コードを使うなどしてドミナントにいく前に少しバリエーションを持たせます
代理コードを使うことによって、家から学校や職場に行き、帰り道に買い物など寄り道をするイメージで曲に変化をもたらすのです
ただそれでもトニックという安定したコードの代理コードでは余り日常生活に変化が無く、物語としてはドラマ性に欠け
ストーリーに変化の少ない日常の風景、印象の薄い曲で終わってしまいます
では、どのようにして平凡な進行の曲を、ワクワクしたり、せつなくなったり、聞く人の心を動かす印象的な物語にすることが出来るのでしょうか?
新たな展開を生むコードとは?
トニックの限界
平凡な毎日に突如変化が訪れると聞いている方はグッと引き寄せられます
物語の新たな展開に期待するのです
音楽の世界では安定したトニックから曲に動きを持たせるトニックの代理コードから帰り道のドミナント経由でトニックに解決する一連の流れに
新たな展開を作り出し、聞いているものを飽きさせない工夫が取り入れられます
今までの日常から展開するわけなのでそのコードには新しい役割が与えられます
サブドミナントという浮遊感
それが、安定のトニックでも、帰り道のドミナントでもない
サブドミナントという第3のコードです
Ⅰ(1)の和音ドミソがトニック
Ⅴ(5)の和音ソシレがドミナント
そしてサブドミナントはドを1として数えて4番目のファの上に構成されるファラドの和音で
Ⅳ(4)の和音といいます
トニックの安定感でもなく、ドミナントの強烈な収束感でもなく
メジャーコードなので明るい感じの中に、トニックにもドミナントにも進行できるフワフワした感覚を持った和音です
フレーズの最初のコードに持ってくるとそれまでの流れからパッと場面が変わったような新たな展開を感じさせる軽さや温度を持っています
サブドミナントの響きを覚えよう
次に覚えるコードの響きはもちろんIVの和音です。
IVファラド
この和音もI(トニック)、V(ドミナント)に次いで特色のあるコードで気を付けて何度も聞いていれば覚えられる響きです
おさらいで確認すると
I(トニック)のオールマイティに使える安定感
V(ドミナント)のとにかくトニックに帰ろうとして落ち着かない強い個性
安定と落ち着かない強い個性の繰り返しでは
例えほかの音を加えて代理のコードなどを使ったとしても曲が単調になります
IVファラドのコードはその2つとも違う役割で
曲の場面を変える働きがあります
メジャーコードなので明るいのですがトニックとはまた違い
フワフワした中にほんの少し切なさも兼ね備えた個性のある響きを持っています
IVのコードが鳴るとパッと画面や舞台が変わったように
新しい展開が起こり、曲の広がりを感じられます
サブドミナントはこのようなコードです
とにかく響きを覚えよう
どんな役割なの?
そして頻繁にV(ドミナント)に進行し最終的にI(トニック)に解決します
まれに直接トニックに解決します
Bメロやサビの出だしなど、クライマックスに向けて発展させたいときには欠かせないコードと言えるでしょう
ドミナントほどでないにせよ落ち着かない響きを持っているのでサブドミナントと呼ばれ
最近ではサブドミナント進行と言ってAメロの出だしに使い
いきなり明るい中にも不安な展開を予感させるような使われ方もします
代理コード
そのほかのコードは
結局この3つのメジャーコードと構成音が1つしか違わない代理コードと呼ばれ
トニック、ドミナント、サブドミナントのいずれかの役割を代理で担っています。
役割をまとめるとI、IV、Vを中心に以下の通りです。
- トニック
Iドミソ・IIIミソシ(シ以外Iと共通)・VIラドミ(ラ以外Iと共通) - サブドミナント
IVファラド・IIレファラ(レ以外IVと共通) - ドミナント
Vソシレ・VIIシレファ(ファ以外Vと共通)
覚えるコツは
ベースになる音=ルート音=一番低い音
を聞いて
ドレミファソラシドの音階に当てはめるのです
重要なのでよく読んで実践してくださいね。
あるコードを聞いてベース音が
その曲のキーの一番落ち着く音=主音ドに聞こえたら
ドミソ=Iの和音=トニックの可能性が高いです
そして曲の最後で安定して解決した感じがするなら
間違いなくそれはIの和音=トニックです
同じようにその曲の別のコードに対しベース音をドから数えて
ソに聞こえ、次に主音ドに解決した、解決したがる落ち着かない響きだったとしたら
ドミナントのVの和音でしょう。
また別のコードでベース音がファに聞こえ、落ち着きとも解決したがるとも違う新たな響きだとしたら
サブドミナントであるIVの和音でしょう。
その後実際のコード譜を確認し答え合わせも忘れずに
楽器が手元にないときはこの練習法です。
併せて実際に演奏しながら響きを確認する練習を積んで行けば
音感は磨かれて行きます。
コード進行を聞いて
感覚を覚えて
コード名を覚える
この繰り返しです
コード進行の例
IVサブドミナントを使ったコード進行
実際に知っている曲で感覚をつかむ
栄光の架け橋
キー=E
A B E
いくつもの 日々を超えて
A B E
たどり着いた 今がある
A=IV
B=V
E=I
サブドミナント→ドミナント→トニックに着地する
典型的な基本のド直球進行
この一連の流れの響きは必ず覚えましょう
この曲はこの後もいくつかの細かいコードを挟みながらも
基本的にはこの進行を繰り返し
壮大なメロディを支えるどっしりとした作品になっています。
おどるポンポコリン
キー=Cとして
コードネームの横に度数表記
CI AmVI
なんでもかんでもみんな
FIV GV
おどりをおどっているよ
CI AmVI
おなべの中からポワッと
FIV GV
インチキおじさん登場
FIV
いつだって わすれない
CI
エジソンは 偉い人
AmVI GV →CI
そんなの常識 タッタタラリラ
まずAメロの
I→VI→IV→Vの進行は
循環コードといって
トニック2→サブドミナント→ドミナントを繰り返す
基本的な進行です
有名な「スタンドバイミー」はイントロから分かりやすくこの進行を使っていますので
イメージしやすいでしょう
BメロでサブドミナントであるIVに進行しています
典型的なサブドミナントを使った場面展開のパターンです
パッと明るく新しい場面が開けるような感覚が分かるでしょうか?
この響きを覚えてくださいね
度数表記=ディグリーネーム
もう一曲
スピッツ
空も飛べるはず
キー=C
C G Am
君と出会った奇跡が
F G C
この胸にあふれてる きっと
FGEmAm
今は自由に
D G
空も飛べるはず
(7thの音は省略して表記しています)
次にコードネームを度数表記(ディグリーネーム)で表します
響きを覚える時はこのディグリーネームを意識して
今この曲のキーの何度のコードが鳴っているかを聞くようにします
音感を鍛えるという事はこの訓練の繰り返しです
I V VI
君と出会った奇跡が
IV V I
この胸にあふれてる きっと
IV V III VI
今は自由に
II V→I
空も飛べるはず
1行ずつ解説すると
1行目
I V VI
君と出会った奇跡が
I→V→VI(Iと構成音が一つ違いの代理コード)となり
トニック→ドミナント→トニックの音感を身に付けましょう
2行目
IV V I
この胸にあふれてる
解説不要
サブドミナント→ドミナント→トニック
代表的な着地パターン
3行目
IV V III VI
今は自由に
このIV→V→III→VI(4536)のベース進行は
IIIとVIがマイナーになったりメジャーになったりするパターンがありますが
今日本で一番多く使われている進行かもしれません。
身の回りで流れている音楽を何気なく聴いていても
この進行を耳にしない日はありません。
コード進行を意識し始めたあなたなら
嫌でも覚えてしまいます。
4行目
II V→I
空も飛べるはず
※本来IIのコードはマイナーコードになりますが、
和音にファ♯→ソの半音進行を組み込むためにこの曲ではメジャーコードになっています
このようにダイアトニックコードから少し外れたコードを使う事はよくあることで
ちょっとした変化でおや?と思わせ曲にアクセントをつけるテクニックです
このII V進行のIV V III VIの繰り返しの後に組み合わせて終止形を完成させる曲のなんと多いことか。
それだけこのIV V III VIのコード進行は日本人に好まれやすいコード進行なのです。
あなたも色んな曲からこのコード進行を聞き取ってください。
あまりの多さに驚くはずです。
コード進行分析が癖になる
日々訓練です
これまでの音感トレーニング方法を理解したら後は毎日訓練あるのみです
本当に音楽が好きなら楽しみながらできるはずです
耳に入ってくる音楽に対してコード進行を気にしながら聞くようになります
これまでとは逆に純粋に音楽を楽しむために聴こうとするとコード進行調査を忘れるように意識しなければならないほどです
音楽家として当然の、職業病のようなものですね
完璧でなくてもいい
あなたも日々
コード進行を意識しながら曲を聞いてください。
そして、完璧にコード構成音が分からなくても良いです
基本の和音が分かる程度でいいのです。
音感には程度の差があります
でも毎日意識して音楽を聴き続けることで必ず上達してきます
あなたのペースでゆっくりと何となくで構いません。
ただの音楽好きとは違う音感を身に付けてください。
音楽の感動の正体が解ってきます
コードを見ずに聴くだけで音程が解ってくると
作曲のパターン、コード進行のパターンを
音感の無い人の何倍ものスピードで学ぶことが出来て
頭に曲がイメージできればその場で伴奏をして弾き語りすることが出来ます
これこそが音楽を自分の言葉の様に表現できる
一般の人とは違う音楽家の特殊能力です。
音感のない人を置き去りにして実力の差は広がるばかりです。
そして何よりも音楽の楽しみ方がより深くなるのです
是非、毎日いろんなところで流れている曲のコード進行を
分析しながら聞く癖をつけるようにしてください。
それではまた。
あなたの音楽ライフが日々レベルアップして充実していく事を
心から願っています